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  • 大分市

関アジ・関サバ

写真/竹内康訓(上)宮地泰彦(下)

伝統の一本釣り

 槍のように突き出した佐賀関半島。高島を置いて、四国の佐田岬と対峙する。その間が豊予海峡。およそ 15 キロ。瀬戸内海と豊後水道の潮がせめぎ合う。流れは速く激しい。このため「速吸の門」と呼ばれ、その名も「早吸日女」の女神が海の守りをつかさどってきた。

 そこは古代から「海部の民」と呼ばれる海人族の活躍の場だった。『古事記』 『日本書紀』あるいは『万葉集』にも登場する彼らは、船を操る水軍として、さらに漁労の集団として、半島の基部に古墳群を残している。

 速い潮の流れは、昔から生きの良い魚類を生み、海藻を育てるところとして知られた。その代表となる魚が関アジ・関サバであり、それを漁るのが今、海部の民の末裔たちである。

 佐賀関のアジ、サバは身が引き締まり、独特の食感、味わいを持つ。人によると、体つきや顔つきが普通のアジやサバとは違うと言う。大分県は海の幸に恵まれた土地柄だが、その中で関アジ・関サバは地域ブランドの草分け的な存在である。それなら、同じ豊予海峡の魚を四国の人が捕ったらどうか。その違いは、佐賀関漁民の心意気と技術の伝統にある。

 彼らが守り継いできたのが「一本釣り」漁法である。まき餌をして網で捕ればたくさん捕れるだろうが、それでは海が汚れ、魚の質も落ちる。彼らのプライドがそれを許さない。だから手釣りにこだわり、いけすで大切に持ち帰り、指も触れないほど丁寧に扱い、鮮度を保つ努力をする。漁協でも、その漁法と手順を守ったものだけにブランド名を付けている。大分の料理屋もまた、それに応える。

 最近の問題は世界的な水産資源の枯渇、漁獲量の減少。関アジ・関サバも例外ではない。資源を守る運動には、関係者だけでなく、広く県民も参加したい。

独特の食感を保つ関サバ。