写真/竹内康訓
「山紫水明」は日本の風景の素晴らしさを端的に表す言葉であり、大分の山河の多くはその典型的な美しさを今に伝えている。それはまた、夏の風物詩であるホタルの乱舞する川が多いということでもある。中でも代表的な川とホタル名所は、ともに「おおいた遺産」に選ばれた白山川と本匠だろう。
白山川は豊後大野市三重町を流れる大野川支流の中津無礼川中流部辺り。稲積水中鍾乳洞をはじめ、ほげ岩などきれいな風景が川とその流域に見られ、「日本の名水百選」の一つである。百選は多くが湧水だが、川そのものが選ばれているのは珍しい。それだけ川が清いということだ。
川は祖母・傾山群の傾山東北山腹に源流を持ち、大白谷を経て中津留地区に入る。この付近が白山川と呼ばれるところで、ふちとなったり瀬を見せたりして稲積山が水面に映る。
川は古くから清流として知られていたが、それを「名水」にまで育て上げ、ホタル名所としたのは住民たちの努力だった。
かつて全国的に農薬の大量使用などによって川が汚染され、昆虫や水生生物が危機にひんした時期があった。白山川にも、その心配が出てきた。
そこで立ち上がったのが地域の300余戸の人たち。1974(昭和49)年に「白山川を守る会」を結成、以来、今日まで「川を守りホタルを救え」の活動を続けてきた。この間、第1回「日本水大賞」の奨励賞を受けたほか、何度も表彰を受けた。
本匠については別に紹介するが、ほかに大分県内のホタル名所として、県ホタル連絡協議会が選んだ河川がある。ホタルが育つ環境を守り、地域の振興に役立てようとの狙いで、大分市の七瀬川、別府市の朝見川、中津市の山国川、宇佐市の伊呂波川、日田市の小野川、竹田市の稲葉川など20余カ所がある。