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姫島の黒曜石産地

写真/竹内康訓

古代人の必需品

 今から何千年前になるだろうか、先史時代に姫島に漕ぎ寄せる縄文人の丸木舟があった。彼らは今の観音崎で、黒曜石の断崖を見つけて狂喜したことだろう。さっそく採取して持ち帰り、槍の穂先や矢尻、包丁などに加工した。九州だけではない。中国や四国からも舟はやってきた。各地の遺跡から姫島産黒曜石の石器が出土している。

 姫島は火山によって生まれた島である。黒曜石も火山岩の一種で、流紋岩質のマグマが水の中など特殊な条件の下で噴出することによってできたと考えられている。ガラス質で硬く、割ると非常に鋭い貝殻のような破断面を示す。それが鋭利な刃物の役を果たした。

 黒曜石の産地は日本列島に60ヵ所ほどあるというが、姫島は佐賀県腰岳とともに九州の二大産地とされ、全国でも屈指。黒曜石と呼ぶように黒く輝くのが一般的だが、姫島の黒曜石は乳白色、あるいは灰色で、加工されても姫島産とすぐに見分けがつく。出土地は大分県内の山間部まで広がっているのはもちろん、岡山、島根、広島、愛媛、高知などの各県にわたる。

 姫島は瀬戸内海の海上交通の十字路と言える位置にある。各地から人々がやって来て、内海という動脈による原石の流通ルートがあっただろう。縄文時代だけではない。それ以前の後期旧石器から、以後の弥生時代まで、実に2万年に及ぶ期間にわたり採取されたと考えられる。

 黒曜石は「姫島七不思議」の一つ、観音崎の千人堂の一帯に露岩の状態で高い崖となっている。崖は海中にも続き、その量は莫大。国の天然記念物に指定されている。それだけではない。大分県の天然記念物に、ス鼻岬の藍鉄鉱、大海の地層褶曲がある。また、島は四つの火山島の集合体であることなど、地質・地形研究の宝庫なのである。

瀬戸内海の海上の 十字路と言える位置 にある姫島。