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別府八湯

写真/宮地泰彦

世界に誇る泉都

 源泉数3000近く、1日湧出量約13万キロリットル。加えて泉質は実に多様。「別府温泉」は日本一であるのはもちろんのこと、世界でも一、二を争う泉都である。 ただ、一口に「別府温泉」と言っても、それは八つのさまざまな温泉郷の集合体。そのため昔から八湯と言いならわされ、現在では「別府八湯」が定着した。浜脇、別府、観海寺、堀田、鉄輪、明礬、柴石、亀川がそれで、含まれる温泉は何と数百カ所もある。
 背後に連なる鶴見岳連嶺の神は「延喜式」によれば火男火売の男女二柱で、温泉の父母となる火山の神。目の前に広がる海は波静かな瀬戸内海・別府湾。『伊予国 風土記』(逸文)によれば「大分の速見の湯を下樋により持ち渡り来て」開いたのが愛媛県の道後温泉とか。
 山と海の間の緩やかな扇状地に立地する市街地は、まさにモザイク。高地から、あるいは海辺から見渡す風景は絶景そのもの。そこから立ち上る無数の湯煙は別府のシンボルであり、看板でもある。とりわけ、寒さの中の冬場が見事だ。
 いで湯は古くから知られ、中世に本格的な開発が始まった。近代では鉄道や航路などを利用して全国から観光客が集まり、現代になってからは特別都市建設法(1950年)の第1号として別府国際観光温泉文化都市となり、外国からの来訪者も多い。同時に、温泉の多目的利用も行われてきた。入湯、観光、またミョウバンの採取にとどまらず、花卉栽培、養魚、さらに医療から美容、地熱発電などなど。
 一時、高度経済成長や観光ブームで好調のゆえか「温泉の上にあぐらをかいている」などと評されたこともあるが、最近の業界や市民の動きは活発。ハットウオンパク(別府八湯温泉泊覧会)など地域活性化を目指し、人材を活用したいろいろなイベントが多様な泉質同様に多彩である。

地域の社交場にもなっている温泉施設。