写真/宮地泰彦
周防灘の大分・福岡両県の沿岸、つまり豊前海の関門海峡から国東半島の付け根にかけて、断続的に広大な干潟がある。有明海と並んで日本屈指の広さを誇り、そのほぼ中央部にあるのが中津干潟である。
中津港を挟み10キロの海岸線、広さは約1350ヘクタール。背後にはその名も大新田の干拓地が防風林で守られ、その松林の続く沖合には干潮時に約2キロ、場所によっては3キロもの干潟が姿を現す。浜辺から眺めると、干潟の先端と水平線が重なり合うようにさえ感じられる。
砂地もあれば泥地もあり、その混じり合った砂泥、さらに小石の広がり、塩性の湿地。楽に歩けるところもあれば、足を泥に取られる場所もある。と言うことは、多様な環境が用意されているわけ。それに伴って生物相も多彩。NPO法人「水辺に遊ぶ会」(中津市)の調べでは約500種の生き物がおり、その4割が絶滅危惧種とか。
カブトガニやアオギス、ナメクジウオ、各種の貝類。ズグロカモメやオオソリハシシギなどの鳥も飛来する。それは好漁場を生みだし、先史時代から人々の生活を支えてきた。
干潟は「海の森」とも呼ばれ、「遊ぶ会」は里山に対して里海の言葉をつくり、環境省に「里海創生支援事業」に取り組ませ、全国4カ所のうちの一つとして指定された。
会の基本活動は子供と干潟に遊ぶことに始まり、市民に海の豊かさや楽しさを知ってもらうことを狙いにした。清掃や観察などの活動はボランティアで行われてきたが、やがて漁民も乗り出し、伝統の笹干見漁が復活した。最近では企業や行政も加わって、自然との共生の運動が幅広く着実に展開されている。