古きを訪ねると、まず大臣塚古墳。5世紀ごろの古墳時代全盛期のもので、百合若大臣伝説を残す。竜ケ鼻の岩には元町磨崖仏、近くに岩屋寺磨崖仏。丘に登ると、岩屋寺の跡を継ぐという円寿寺。さらに金剛宝戒寺などが、多くの文化財を抱える。仏に対し神では松坂神社、弥栄神社など。政治的には南麓・古国府の古代国府に次ぐ高国府、中世・大友氏の上原館(西山城跡)が市街地を見下ろし ている。
近代になると、これに学問と芸術が加わった。大分中学校を継ぐ大分上野丘高校、大分経専の後の大分大学経済学部、それが移転すると大分県立芸術文化短期大学が立地した。そして森の中に大分市美術館もできた。東京の「上野の森」に匹敵、いやそれ以上の「森」なのである。
だが、その自然の森も、次第に荒れてきた。見かねた住民が立ち上がり、森を守るボランティア組織が清掃や剪定・維持活動を展開している。文化の面でも立ち上がる人たちがいる。アートの森を盛り上げようとする個人・グループが動き始めた。地域の力が今、聖域を守ろうとしている。