写真/竹内康訓
玖珠盆地の真ん中に立って見回すと、何となく気持ちが和んでくる。周りの山々は平らな頂を連ね、穏やかな風景に包まれる。幼い日のお伽話の国に入り込んだような気分。そうだ、玖珠町は「童話の里」なのだ。
「童話の里」は日本のアンデルセンこと久留島武彦の出身地だからであるが、その背景に、これらのメサ山群があるからではなかろうか。メサはスペイン語のテーブルに由来する、四囲に断崖を持つ卓状台地のこと。全国でも、これほどメサが集中している地域は珍しい。
中でも、万年山は「日本の地質百選」に挙げられた二重のメサ。標高1140メートルで、盆地の南の端を限っている。万年山をハネヤマとは読み難く、幾つかの起源伝説があるが、ハは端、ネは嶺で、盆地の端っこの山という意味ではなかろうか。これに幡年の字が当てられ、さらに佳字の万年となったのか。
草原を広げる頂上台地からの展望は360度。南東のくじゅう山群から東は由布、北は耶馬渓や英彦山、南には阿蘇、西には津江の山々。ミヤマキリシマはじめ、草地には多くの花。 伐株山は万年山の前面にある、名前の通り切株の形をした標高690メートルのメサ。中世の玖珠城の跡を残す頂まで車道が通じ、盆地を見下ろすのに良い。
これがクスノキだったと伝説は語る。『豊後国風土記』は玖珠郡について「昔、洪樟樹(大きなクスノキ)があり、それで球珠(玖珠)と言う」とある。これを切り倒したという大男の伝説はあまりにも有名。大分県内の巨人伝説の代表格である。
盆地周辺のメサには、ほかに国指定天然記念物の大岩扇山はじめ小岩扇山、宝山、青野山、牧の平、高波山、鏡山など600から800メートルクラスがあり、城跡として著名な角埋山は頂上の狭いビュート地形である。