写真/竹内康訓
「よいしょ」「よいしょ」「ひょうたん様のお通りだ!」柴山八幡社(豊後大野市千歳町)の霜月祭は、一般に「ひょうたん祭り」と呼ばれる。祭礼では、古武士の行列を擬した一行が里へと繰り出して行くが、その先導をするのがひょうたん様。
その姿が何とも奇抜である。頭には長さ80センチのひょうたんを載せ、太刀を背負った派手な衣装。足には長さ1.2メートル、重さ8キロほどの巨大なわらじを履く。芝づえを突いてはいるが1人では歩けず、両側に介添えが付く。
沿道の参拝者には、首から下げたひょうたんに満たした神酒5リットル強を振る舞う。これをいただくと無病息災とかで、氏子や観客は競ってちょうだいする。
続く行列は騎馬の武士1人と馬方2人、さらにやり持ち、そしてみこしなど。何しろ、1キロに2時間かかるのろのろ行進とあって、こちらは辛抱。人も馬も苦労する。
伝えによると、祭は建久年間(12世紀末)から始まった。執行するのは、氏子の中から交代で定められる座組という組織。ひょうたん様も年交代で、選ばれた人には幸運がもたらされるという。しかし大変だ。悠々というより、ようようと歩き、神酒の返杯などでお顔も赤く、時にはふらり。最後にはわらじに綱をつけて引っ張られる。
ところで、柴山八幡社は宇佐神宮の分霊を祭るが、1450(宝徳2)年の棟札には「豊後州天部郡内」との記述があるという。天部は海部だろうか。上流の沈堕の滝の蛇娘伝説が佐賀関とかかわりがあるように、一時は海部郡に属したのか。それは千歳地域をめぐる複雑な領有の歴史と関係するらしい。 八幡社辺りは大野川河岸段丘の地形が実に素晴らしい。対岸の国道326号から見下ろすと、川沿いに幾重にも積み重なる平地の風景が見事である。