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富貴寺

写真/竹内康訓

浄土へ深い祈り

 石段を上がり仁王門を経てすぐ、空のぽっかりと開けた平地が広がる。明るい空間を紅葉がさらに明るくし、そこに大堂が立つ。宝形造りの瓦屋根は緩やかな反りを見せて照り輝いているが、庇が深いためか正面三間、奥行き四間の堂宇は暗く静かに守られているようだ。

 六郷満山の蓮華山富貴寺。国宝・大堂は九州最古の木造建築であり、宇治平等院鳳凰堂、平泉中尊寺金色堂と並ぶ日本三阿弥陀堂の一つ。前庭にたたずんで目を閉じれば、念仏を唱えながら廊下を巡る阿弥陀三昧の僧たちの姿が浮かぶ。堂の周りにも、文化財の指定を受けた石造品が立ち並んでいる。

 堂内に入る。四天柱(4本の丸柱)を立てた内陣の須弥壇に本尊・阿弥陀如来の 座像。国重要文化財。正面の扉を開け、外陣にぬかずくと、柔らかい光が差し込んで如来を包む。

 背後には極楽浄土の壁画。かなり色あせ、はく落してはいるが、はっきりと見て取れる浄土曼陀羅である。柱にも仏・菩薩や宝相華、唐草文。外陣の長押にもまた、仏や菩薩、明王、天部、天人などの 姿が読み取れる。

 宇佐の県立歴史博物館にレプリカがあり、かつては極彩色だったことが分かる。 このあふれる色の中で、参詣者は西方浄土を思い描き、ひたすらに祈りをささげたことだろう。

 他の満山寺院と同じく仁聞の開基とされ、カヤの一木で造られたとの伝承があるが、大堂は平安時代後期の建築。宇佐 神宮の大宮司家の祈願所として守られた。明治末の解体修理の後、先の戦争で近くに落とされた爆弾で破損するなど一 時は荒れていた。修復して1952(昭和27)年に国宝に指定、 60年代半ばに再修理された。 寺名は所在地・蕗による。フキは急斜地の地形地名だが、その斜面を切り開き、周囲の樹林と見事にマッチしている。

大堂内の須弥壇にある 本尊・阿弥陀如来座像。