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絶壁と言ってもいいだろう。 普光寺本堂の向こう、大きな谷を越えた岩の壁に巨大な不動明王が見える。摩崖仏としては日本最大級。太古の阿蘇大噴火で生じた溶結凝灰岩の壁一面に火焔を描き、その下に、矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制多迦童子(せいたかどうじ)を従えた坐像。右手に剣を握り、大きな目をむきだした様子は、憤怒の表情が多い、不動明王らしくないおおらかさがある。
鎌倉時代の作とされ、高さ11・3メートルで、摩崖仏としては日本最大級。不動明王の横には2つの龕(がん・石窟)が連なる。一つには、小さな摩崖仏と数多くの石仏。もう一つには、祈願の場となる護摩堂がある。遠くからの眺めは、インドや中国、シルクロードを越えた中央アジアの石窟寺院をも思わせる。
普光寺は別名 「アジサイ寺」ともいう。不動明王が見下ろす谷には3000株のアジサイ。色とりどりの花が咲く6~7月には、多くの人が訪れる。
写真:山路康弘氏 提供