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羅漢寺

写真/宮地泰彦

法灯守り継ぐ聖地

 本耶馬渓の観光拠点である競秀峰・青の洞門から少しさかのぼり、山国川支流の跡田川を入ると羅漢寺がある。観光的にはセットとされることが多い。

 「鎮西羅漢の法窟」とされる寺は、険しい岩峰・岩壁の中腹に仏域を設け、いつの時代にも変わらぬ多くの参拝者を迎え、伝統の法灯を守り継いできた。今日も伝わる「ヒコ・ラカ・ウサ」の言葉は、聖地としての英彦山・羅漢寺・宇佐神宮の巡礼・巡拝路を語っている。

 伝えによると、聖域は645(大化元)年、インドの僧・法道仙人の洞窟修行に始まるという。無漏窟に安置される3700体余りといわれる羅漢像は、1337(延元2)年に当地を訪れた昭覚禅師が中国の僧・順建とともに彫ったという。大小さまざまの無数のしゃもじには参拝者の願いが込められる。

 無漏窟とともに、凌雲閣の見事な構えは訪れる人を圧倒する。伝説では、かつて大友宗麟が寺社の焼き打ちをしたとき、羅漢寺にもたいまつをかざした兵士がなだれ込んだ。ところが、寺の屋根に大きな蛇竜がいて寄せ手を遮る。これに鉄砲を撃ちかけると、すさまじい稲妻が走り、雷鳴がとどろき寺を守った。

 登山口のふもとには、青の洞門を掘った禅海の墓と、掘削に使った鑿、槌を保存する禅海堂もある。近くから寺へのリフトがあるが、上りか下りの一方は昔ながらの参道を経由してほしい。杉木立の中にこけむす石畳が通じ、山門や石塔などが、古刹の風格を語りかけてくれる。

 寺の門前には、田畑の上にびょうぶのように連なる岩峰の古羅漢の景がある。頂の直下の岩壁には昔に堂宇を構えた跡や仏像、石塔などが残っている。

 なお、近くの跡田川の中州には耶馬渓風物館が耶馬渓の歴史資料や文物を伝え、上流には洞鳴の滝なども見られる。

大小さまざまの無数のしゃもじには参拝者の願いが込められる。