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文殊仙寺

写真/竹内康訓

知恵の水が湧く

 国東半島の中央部で、両子山と千灯岳の間に立つのが文珠山(616メートル)。その麓にあるのが峨眉山文殊仙寺である。

 国東六郷満山の末山本寺で、本尊は寺名の通り文殊菩薩。六郷満山には仁聞の開基といわれる寺院が多いが、ここだけはただ一つ、役の行者小角の創建と伝える。

 「彦山来歴記」によると、小角が半島で修行中、この山を霊地と感じていた。その後、中国の五台山に登って文殊菩薩を拝した際、菩薩から「五台山に似た土地が日本にないか」と問われ、「豊州国埼郡にある」と答えると、「そこで待て」と言う。国東に戻り待っていると、文殊が訪れた。行者はすぐに寺院を建立した。648(大化4)年のことであると伝える。

 駐車場のある参道入り口には気迫に満ちた仁王像が立ち、長い石段を上ると山門、客殿、鐘楼。境内には日本一大きいという総高8メートル余の宝筐印塔があり、文殊耶馬などの景色が見事。

 山門からさらに進むと本殿奥の院の文殊堂があり、岩窟から「知恵の水」が湧く。「文殊の知恵」と言われるように、この水を拝領すると知恵が授かるとされ、受験や進学の際に訪れる人が多い。また、子供が生まれると初参りし、無事の成長を祈願する古くからの習わしもある。

 日本三文殊の一つにも挙げられる本尊は、もちろん獅子の背に置いた蓮華座に座す菩薩像。秘仏として12年に一度、卯年にしか開帳されない。

 寺が県指定の史跡であるほか有形文化財も多いが、文珠山の自然林は天然記念物であり、「21世紀に残したい日本の自然100選」の一つ。巨大なケヤキの古木はじめ、スダジイ、カシ、スギなどが全山を覆う。僧たちの修行の場であり、登山者たちを静かに迎え入れてくれる。

境内には日本一大きいという総高8メートル余の宝筐印塔があり、文殊耶馬などの景色が見事。