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姫島 盆踊り

写真/石松健男

人口4倍の3日間

 毎夏、盆の姫島には帰省した人たちに加えて見物客で「島が沈む」と言われるほど大勢の人が集まり、男性の荒々しい動き、女性の優雅な身振り、そして子供たちのユーモラスな踊りに沸く。一島一村、姫島村の盆踊りは今や全国版である。

 姫島盆踊りは「風流」の要素を取り入れた鎌倉時代の念仏踊りに由来するとされる。お盆に帰ってきた祖先の霊をなぐさめ、再び送るための行事だが、併せて村共同体の娯楽的芸能として伝承され、近年は観光的な注目も集めた。

 村の人口はおよそ2000人(2015年5月現在)だが、盆踊りの3日間には3倍から4倍もの人たちが島に上陸するとさえ言われる。

 踊りには伝統的なものに加え、毎年の創作踊りがある。伝統的な踊りはアヤ、銭太鼓、キツネ、タヌキ、さらに猿丸太夫など。創作は各地区によって例年考案されるが、一夏限りで終わる。

 アヤ踊りは北浦の若い男女が対になって、女性の優雅な踊りの間を男性が竹の棒を激しく振りながら縫って行く。銭太鼓は松原地区の青年男女。フグの皮を張ったタンバリンのような片面の太鼓を男性が扱い、これも女性とからみ、重厚と優雅が対照的だ。

 キツネ踊りは北浦の子供たち。かつては大人の踊りだったが、戦後間もなく子供たちに引き継がれた。かわいらしい化粧とユーモラスなしぐさが大受けした。タヌキは大海地区の子供。キツネがいるならタヌキも…との発想で定着した。猿丸太夫は西浦地区。何時の時代にか、島の外から伝わったらしい。

 姫島は「書紀」に白石から生まれた美女の神にちなむと記される。古代から、日本列島の畿内と朝鮮半島、あるいは九州と中国地方を結ぶ「海の十字路」だった。踊りのなかに、海の匂いが感じられ、異国の「妖しさ」をも思い起こさせるのはそのせいだろうか。

かわいらしい化粧とユーモラスなしぐさが 人気のキツネ踊りの主役たち。