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上野の森

写真/竹内康訓

薫る自然と文化

 大分市中心街と南大分地区を限るかのように、長く延びる丘陵がある。標高およそ 70 メートル。まるで伏せた竜の姿。その臥竜の頭部に当たるところが上野の森。一段低く標高 30 メートル辺りに上野丘の町並みが広がり、台地が大分川河畔の元町に切れ落ちたところを竜ケ鼻とも呼ぶ。

 上野の森の中心になるのは都市公園の上野ケ丘墓地公園。開園してすでに半世紀を経た。約9ヘクタールに豊かな植生が見られるほか、展望の良さに恵まれ、付近の人たちだけでなく、大分市民の憩いの場所になっている。

 しかし、上野丘の魅力は森だけではない。街中を含めて、そこには大分の原点とも言える歴史と文化・芸術がある。

 古きを訪ねると、まず大臣塚古墳。5世紀ごろの古墳時代全盛期のもので、百合若大臣伝説を残す。竜ケ鼻の岩には元町磨崖仏、近くに岩屋寺磨崖仏。丘に登ると、岩屋寺の跡を継ぐという円寿寺。さらに金剛宝戒寺などが、多くの文化財を抱える。仏に対し神では松坂神社、弥栄神社など。政治的には南麓・古国府の古代国府に次ぐ高国府、中世・大友氏の上原館(西山城跡)が市街地を見下ろし ている。

 近代になると、これに学問と芸術が加わった。大分中学校を継ぐ大分上野丘高校、大分経専の後の大分大学経済学部、それが移転すると大分県立芸術文化短期大学が立地した。そして森の中に大分市美術館もできた。東京の「上野の森」に匹敵、いやそれ以上の「森」なのである。

 だが、その自然の森も、次第に荒れてきた。見かねた住民が立ち上がり、森を守るボランティア組織が清掃や剪定・維持活動を展開している。文化の面でも立ち上がる人たちがいる。アートの森を盛り上げようとする個人・グループが動き始めた。地域の力が今、聖域を守ろうとしている。

弥栄神社