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龍岩寺

写真/宮地泰彦

岩窟に浮かぶ仏

 大きな岩窟に、まるで投げ込まれたかのような懸造りの小さな礼堂。龍岩寺奥の院である。内部に入ると、素木の三体の仏像が浮かび上がるかのような姿で訪れる人を迎える。思わず目をつむってぬかずきたくなる。
 宇佐市院内町の恵良川から支流の院内川沿いにさかのぼり、大門に龍岩寺がある。裏手の山道に入り、さらに岩壁の道を横に伝うと、眼前に奥の院が全容を現す。足元は谷。一本の大きな木に刻みをいれて作ったはしごがある。がけ道ができるまではこれを登ってきたのだろう。
 礼堂は桁行3間、梁間2間。屋根は外陣のみ片流れの板ぶき。床下の土台桁は両方の岩盤に架け渡され、これを三本の柱でしっかり支えている。 正面蔀戸横の板戸を開けて入ると、板敷きの外陣から格子を隔てて内陣の仏たちと対面できる。内陣には屋根がない。岩の天井が屋根代わりである。
 木造の仏は向かって右から薬師如来、阿弥陀如来、不動明王で、高さはいずれも3メートル前後。一木造りで木の肌そのものの白さ。ただ、結跏趺坐する腰から下は横材を使っている。
 ゆったりと座る三体の彫り方は大胆。しかし、お顔は気高く、肢体も優美。比較的簡単な手法から見て、岩窟の磨崖仏から木彫仏への過渡期の作で、藤原中期のものと推定される。礼堂には「弘安九年」(1286年)の墨書銘があり、当初は単なる仏壇に仏のみがおわしたらしい。いわば、仏を守る建物ではなく、仏を隠すことによって身近に仰がせるものか。おかげで仏は自然光の下、白く浮かび上がる。ともに国指定の重要文化財。
 伝説では、746(天平18)年、行基が宇佐神宮に詣でる途中で大雨に遭い、当地に宿ってクスで仏を彫り、寺を開いたとか。当初は天台宗に属していたが、後に禅宗に変わった。

懸造りの小さな礼堂。