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鮎のちょん掛け

写真/竹内康訓

知恵と巧みの産物

 番匠川は大分、いや九州を代表する清流である。魚影も濃い。中でも夏から秋にかけては鮎が知られ、番匠川水系独特の漁法として「ちょん掛け漁」が伝わる。番匠川の大本として本匠と名乗る地域をはじめ、支流の井崎川、久留須川など弥生、直川地区などで行われる。

 1.5メートルほどの竹ざおの中ほどに釣り糸を結わえ、釣り針をゴムでさおの先端に取り付ける。網を仕掛けて鮎を囲い込んだあと、水中眼鏡を付けて潜ったり、のぞき込んだりして、鮎を追って「ちょん」と手首を返すようにして引っ掛ける。針が先端から外れ、掛かった魚はさして傷つけないまま取り込める。

 口で言うほど簡単には引っ掛けられないが、番匠川漁協の組合員のうち100人以上がこの漁法をこなし、年季の入った漁師になるとほぼ百発百中。魚籠の中では、生きの良い鮎が銀鱗をひらめかせて跳ねまわる。

 鮎は稚魚の時期には昆虫などを餌とするが、川をさかのぼって成魚となると、川底の岩石に付いた藻類しか食べない。このため普通の餌釣りができない。そこで昔からさまざまな漁法が工夫された。縄張りを持って侵入する仲間を追い払う習性を利用しての友釣り、魚群の中に数本の釣り針を付け、投げ込んで引っ掛けるコロガシ、ごろ引き、そしてウ飼いや簗など。その中で、ちょん掛けはまさに番匠川漁師の知恵と巧みの産物。水質が良く、透明度が高い清流ならではの漁法と言えよう。

 鮎の名は、秋に川を下る、つまり、あゆる(落ちる)魚が起源とも言う。1年限りの命のため年魚とか、香りがあるので香魚、さらに細かいうろこで細鱗魚とも。鮎の文字は縄張りを「占める」、あるいは神功皇后伝説で「占い」に使われたから当てられたというが、古代日本や中国では本来、ナマズのこととか。

番匠川水系独特の漁法として伝わる「ちょん掛け」。さおの先端に釣り針を取り付け、鮎を引っ掛ける。