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内成の棚田

写真/竹内康訓

農民の汗の結晶

 棚田とは、傾斜地にある稲作地の集積。狭い田んぼが重なって、一目で見渡せる。英語でライス・テラスと言うように、たくさんのテラスが積み重なる。畑の場合は段々畑である。
 稲作の適地は、水利に恵まれ、しかも水はけの良い土地。日本列島はもともと傾斜地が多く、そこに水田を営もうとすれば棚田になる。傾斜の少ない平野部や湿地での灌漑技術が発達するのは近世だから、それ以前は当然のこととして傾斜地を選んで水田を開いた。
 山がちな大分県では、とりわけ棚田が目立つ。農水省認定の「日本の棚田百選」のなかに、大分県からは内成のほか由布市の由布川奥詰、豊後大野市の軸丸北、玖珠町の山浦早水、宇佐市の両合、中津市の羽高の6ヵ所が選ばれた。全国でも五指に入ろうという数の多さである。
 内成棚田は戦国期から江戸期にかけて開かれ、面積は40余ヘクタール、水田およそ1000枚とまさに千枚田。これを60戸で維持する。平均勾配はほぼ10分の1、つまり水平距離10メートルで1メートル高くなる傾斜。すぐお隣に由布川奥詰棚田の5ヘクタールもあるから、棚田風景では日本有数。
 初夏から水が張られ、田ごとの月を映し、盛夏には緑の風、秋には黄金色の穂波をヒガンバナが赤く縁取る。大観光地・別府の背後に見事な風景が広がる。
 景色だけではない。棚田は国土の保全や生態系の保護にも欠かせない。さらに地区では、棚田米のブランド化で高い付加価値を目指している。
 地球の各地にも棚田は多い。韓国、そして中国の雲貴高原、ベトナム、タイ、ネパールからフィリピンやジャワ、バリの島々。筆者はパキスタンでも見た。イランやマダガスカル島にもあるとか。棚田は、稲作農民の知恵と汗の結晶とも言える存在である。

稲穂が伸び、彼岸花の赤が映える棚田。