だんご汁

写真/宮地泰彦

ふるさとの逸品

 だんご汁には、たくさんの流儀がある。 だんごの形、使う野菜、 だしはどうするのか、 それぞれの家に伝わる流儀と、 それぞれの地域で変わる流儀から 「大分のふるさとの味」が生まれる。

 
 だんご汁は大分の「ふるさとの味」である。だんごをみそ仕立ての汁で野菜とともに供する家庭料理が基本で、上質のシイタケやいりこに恵まれた大分ならではの逸品。とりわけサトイモの季節がよく、 独特のだんごの口当たりとともに格別。
ところが、よその人たちを戸惑わせるのが「だんご」。普通には団子と書き、小麦粉を練って寝かせ、球形に丸めるのが 一般的。しかし大分では、手で器用に引き延ばした短冊の形だ。

 ある石橋の研究者が、大分市吉野に「だんご橋」があると聞き、水面に映る影とともに円形に見える石造アーチ橋と思って訪れたが見当たらない。そこで地元の人に案内を乞うと、連れて行かれたのは薄く平たい石を連ねた沈み橋だった。まさに大分の「だんご」だったのである。

 ただ、大分でもだんご汁を「ほうちょう汁」と呼ぶ地域もある。伝えによると、大友宗麟は鮑の腸が好物だった。ある時、それが手に入らなかったため、家臣が小麦粉を練って腸に似せて延ばし、それをゆでて宗麟から気に入られた。以来、これを鮑腸と書くようになったとか。

 しかし、「ほうちょう」の歴史はもっと古い。日本の麺は中国の影響を受けており、伝わったのは奈良から平安の時代。 その一つに餺飥があり、これが「ほうとう」から「ほうちょう」になったと考えられている。

 実は、山梨県の郷土料理として有名なものに「ほうとう」があり、これが大分のだんご汁とほとんどそっくりと言ってもよい。山梨の「ほうとう」と大分の「ほうちょう」は兄弟だ。

 延ばしてゆでるものには、これも大分名物の「やせうま」があるが、これをつけ汁で食べる「ほうちょう」、さらに地域によっては団子そのものの団子汁もある。 謎は多く「おしまい、だんご汁」とはなかなか言えない。

大分のだんごは、手で器用に引き延ばした短冊の形。