• 民俗

おおいた弁

写真/宮地泰彦

日常彩る優等生

 方言を話せば、そこがふるさとになる。 おおいた弁を聞けば、そこが大分になる。 時を超えて今に息づくおおいた弁は、 大分の風土そのものだ。
 

 「沈み橋がせもうじ離合できんけん一寸ずりじゃ」。大方の大分人なら理解できようが、沈下橋が狭くて車の行き違いができず渋滞だ―である。沈下橋は増水時に水面下に沈む橋。潜水橋、潜没橋、冠水橋 など、日本各地で呼び方の違いはあるが、 沈み橋は大分独特。

 「離合」は集散に連動し、本来はすれ違いの意味はないが、鉄道用語としてあっ たものが大分弁に入ったか、あるいは逆か。「一寸ずり」はほんのわずかずつしか前進できない状態を表す大分弁の優れもの。

 大分弁の優等生はいろいろある。例え ば、「雨が降りよる」という進行形、「雨が 降っちょる」の既然形も、共通語では正確 に使い分けることのできない大分弁の優 れた言い回しだ。「よる」だったら、共通語 は「つつある」としか言えないだろう。

 ともあれ、大分方言には共通語が持っていない優れた語彙がたくさんある。古 語に由来するものも多い。「よだきい」(よだけし)、「いびしい」(いぶせし)、「せちい」(せつない)などなど。大分人はこうした方言を実に上手に日常会話で使いこなしている。

 しかし、一口に大分弁と言っても、中津弁、日田弁、玖珠弁、国東弁、佐伯弁 などまさに多様である。江戸期、大藩の治下にあった博多弁、熊本弁、鹿児島弁 などに対し、大分県域は小藩分立のため地域が特色を持ち、個性が強いからだとされる。

 このため学者は少なくとも四つ、多い人では10の方言区画に分類した。語彙、アクセント、文法など、大分方言は今後も研究、記録されなくてはならない。

 方言は近代になって共通語の強制による排除の時代から、現代では見直しの 時期、さらに楽しむ時代を迎えた。大分弁は日本でも素晴らしい方言の一つ。方言による地域振興の動きも活発化している。

方言を見直し、地域活性化に生かす動きも。