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豊後二見ケ浦

写真/竹内康訓

映える男岩女岩

 新しい年を迎えた。豊後二見ケ浦(佐伯市上浦)は全国でも屈指の初日の出の名所である。正月の太陽は生命力に満ちあふれ、人に新たな希望を抱かせる。

 男岩は高さ17メートル、女岩は同じく10メートル。夫婦岩に渡されたしめ縄は長さ65メートル、最大直径75センチ。重さ2トン。毎年12月の第2日曜日、地元の人たちを中心に350人の手によって編まれ、新しいものに張り替えられる。ギネスにも登録された日本最大のしめ縄とか。年末年始には夜のライトアップも行われる。新春は4日夜まで。

 二見ケ浦の名は、これも初日で知られる伊勢の二見ケ浦(三重県伊勢市)にちなむが、岩も縄も豊後の方が倍近いスケールを持つ。ほかに筑前二見ケ浦(福岡県志摩町)もあるが、これは逆に夕日を見送るところ。

 古来、太陽は神そのものだった。人は太陽によって生きる。人類だけではない。生きとし生けるもの、さらには地球そのものが太陽によって生きている。太陽の子を日子、日女と呼ぶ。男と女の彦と姫である。時として邪悪の世界ともなる闇の夜を経て、朝の太陽が昇りくる姿は生命再起を感じさせた。とりわけ初日は「自ら燃えるものに影はない」のシンボルである。
 目立つ岩石もまた信仰の対象となり、磐座として神の降臨する場所とされた。特に二つの岩が並び立つと、天と地、陽と陰の典型ともされ、夫婦岩などと呼ばれて夫婦円満、家内安全、天地安穏を示し、さらには恵比寿と大黒にもなぞらえられ、大漁、海上安全の祈りの対象ともなった。夫婦木などとともに、各地にあって地名ともなる。

 太陽、岩、夫婦。見事にそろったのが豊後二見ケ浦。近くの中学校の名が東雲というのも良いではないか。さらに暁嵐の滝をはじめ、上浦海岸は「海の耶馬渓」ともいう景勝地である。

夜のライトアップに浮かび上がるしめ縄と夫婦岩。