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真玉歌舞伎

写真/竹内康訓

舞台と客席一体

 ご存じ「白浪五人男」の勢ぞろい、舞台で見えを切る中学生。続いては「雪の曙 伏見の里」で大人たち。舞台と客席が一体 となって、鳴りやまぬ拍手と歓声で盛り上がる。なにしろ、舞台に立つ人も客席の人たちも、日ごろからの顔なじみ。道で会えば声を掛け合う仲だ。
 真玉歌舞伎は保存会の人たちにより演じられ、真玉中学校の生徒たちも特別出演。200年以上の伝統を持つという芸能 がしっかり守り継がれている。と言って、 連続してきたわけではない。長い中断を経て戦後に保存会ができたものの、それもお定まりの高齢化、後継者不足で一時は活動停止。それが今、見事に復活しているわけ。
 真玉地域にはかつて、歌舞伎や神楽などの多様な芸能が生活の中に生きていた。それを廃れさせてはいけないと、地域の 熱意が実った。一つのきっかけは市町合併だったともいう。真玉の名を消してはいけない。人々の思いと行政が一致し、かつての町役場が文化センターとなり、舞台 は提供された。この力がある限り、真玉歌舞伎はさまざまな場で拍手を浴びるだろう。
 昔、大分県内では各地に歌舞伎や人形芝居があった。同じ豊後高田市では算所芝居が知られていたし、中津市には有名な人形芝居があり、これは北原参所と呼ばれていたようだ。算所も参所も「散所」 に由来すると思われる。古代に社寺や領 主に芸能や交通運輸などで仕えた集落である。県内では宇佐八幡と一連の八幡社 が散所を持っていたと推測してよかろう。
 真玉は真玉、算所は若宮、北原は宇佐、ほかに国見田舎歌舞伎は伊美別宮、杵築歌舞伎は杵築若宮の各八幡に伴うのか。杵築歌舞伎の衣装は歴史資料館に残り、貝原益軒の『豊国紀行』に「諸国を回り歌舞をなし傀儡子を操る」と記録されている

地域の熱意に支えられ 、200年以上の伝統を持つ真玉歌舞伎。保 存会の人たちが舞台に立ち、地元 の中学生も特別出演している。