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別府アルゲリッチ音楽祭

写真/石松健男(下)堀田力丸(上)

文化発信のモデル

 世界的なピアニスト、マルタ・アルゲリッチを迎え、その総監督のもと「別府アルゲリッチ音楽祭」が別府市で開かれる。世界の音楽界をリードする音楽家との演奏は、全国のクラシックファンを堪能させている。
 音楽祭が始まったのは1998(平成10)年。開催の狙いは、別府市民、大分県民が参加しての手づくりの音楽祭をめざし、音楽を通じた国際親善を図りながら、独自の音楽文化をつくり上げ、世界に向けて情報発信すること。
 また、新しい世紀を担う子供たちに世界的な質の高い音楽を聴いてもらい、若手音楽家の育成を図るとともに、高齢者と子供たちが共に音楽を楽しめる機会を提供すること。さらに、アルゲリッチや世界の音楽界をリードする演奏家と学生たちとの出会いの場をつくり、育成、支援すること。
 総監督のマルタ・アルゲリッチはアルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。5歳からピアノを学び神童と呼ばれ、8歳でモーツァルトやベートーベンのピアノ協奏曲を弾いてデビュー。ヨーロッパに渡って活発な演奏活動を始め、65年にショパン国際コンクールに優勝して世界的な評価を決定的にした。
 別府との出会いは94年。ビーコンプラザ・フィルハーモニアホール名誉音楽監督に就任、翌年にはおよそ10年ぶりにソロ・リサイタルが実現して大きな話題となった。
 その陰には、大分ゆかりのピアニストで、彼女と旧知の伊藤京子総合プロデューサーの大きな力と存在があった。
 アルゲリッチは大分県の外国人名誉県民。音楽祭では、さまざまな出来事もあった。弱い組織基盤もその一つ。その解決策として、財団法人化が図られ、アルゲリッチ芸術振興財団が誕生。15年には、同財団名誉理事の椎木正和氏(福岡県在住)の寄金で「しいきアルゲリッチハウス」が完成した。ビーコンプラザ近くの小ホール(150席)で、音楽祭の歴史を未来へとつなぐ拠点となる。
 音楽祭生みの親の伊藤プロデューサーは「全国の自治体の芸術文化政策に大きな影響を与える”大分モデル“ができた」と高く評価している。

2004(平成16)年の第6回音楽祭で指揮するアントニオ・パッパーノさん(英国コベントガーデン王立歌劇場音楽監督)。