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「仏」が、覆いかぶさるような岩壁に刻まれている。不動明王坐像(高さ3・8メートル)と、左右に矜羯羅童子(こんがらどうじ)、制多迦童子(せいたかどうじ)の立像。不動明王は、真言密教で最高位にある大日如来の化身二童子は仏法に従い脇を固める仏である。石仏へ、坂道を上がると、不動明王がおだやかな顔で参拝者を迎える。
12世紀の平安時代末期から鎌倉時代にかけての摩崖仏という。大野川流域には同じ時代の摩崖仏や古寺が数多い。「奥豊後大野川流域28カ所古寺摩崖仏不動尊霊場」と呼ばれ、国東半島の六郷満山と並ぶ霊場とされる。
「犬飼石仏」は摩崖仏だけにとどまらない。不動明王の上方の岩壁には、かっての寺の存在を示すのか「龍傳山」の文字。横手には「南無大師遍照金剛」と刻まれている。「遍照金剛」とは真言宗の祖・空海のこと。岩壁の文字は空海への帰依を唱える経でもある。ほかにも、いくつもの五輪塔が並ぶ。夏は蟬しぐれ、冬は木漏れ日に包まれる仏教空間がある。国指定史跡。

写真:山路康弘氏 提供